宮里先輩が「もう行くわ」と言い、足音が近づいてきた。
この場から離れようと思うのに、やっぱり重くなった足が動かない。


「……美波ちゃん?」

「えっ?」


直後、宮里先輩と輝先輩の声が続けざまに落とされる。
私は、反射的に肩をビクッと強張らせた。


「美波?」


慌てて駆け寄ってきた輝先輩の目が見られない。
しばらくの沈黙のあと、宮里先輩が息を小さく吐いた。


「あー……えっと、またな」


彼が足早に立ち去ると、再び沈黙に包まれる。


「美波……俺……」

「いつから……?」


気まずそうな輝先輩を遮る。
私の声は、自分でも驚くほど低かった。


「え?」

「……いつから、目標を見つけてたの?」

「……美波と話すようになる前には、もう……」

(なにそれ……)


おかしくて、虚しくて、嘲笑のような笑みが零れる。


「だったら、どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」

「それは……」

「同情してくれた? まだ立ち直れない私を見てると、安心できた?」

「ッ、違う!」

「先輩は私が可哀想だから一緒にいたの?」


こんな風に言いたくないのに、嫌な言葉ばかりが口から落ちていく。