花火が終わると、周囲にいた人たちは一斉に駅に向かった。


「今は電車に乗れないかもな。もうちょっとしてから行こうか」

「うん」


理由なんてなんでもよかった。
ただ輝先輩と一秒でも長くいたくて、迷うことなく頷いていた。


しばらく他愛のない話をして、少し人が減ってから駅に向かうことにした。
屋台はすでに店じまいをしているところもあって、なんだか寂しくなる。


一時間前には賑やかだったお祭り会場は、確実に終幕に向かっている。
その光景は、夏休みの終わりに似ていた。


「なぁ、美波」

「うん?」

「ちょっとだけ寄り道して帰らない?」

「え?」

「この近くに、星が綺麗に見える公園があるんだって」

「えっ、行きたい!」


私がパッと目を輝かせると、彼も嬉しそうにした。


輝先輩に促されて、駅とは反対方向に歩いていく。
慣れない下駄を履いているから靴擦れが心配だったけれど、真菜におすすめされたものだけあって歩きやすいのが救いだった。