「……だからさ」

「うん?」

「俺、美波のことが好きなんだけど」


小さく頷いて、言葉の真意を探る。


「………………うん?」


たっぷりの沈黙を要したあとで、思い切り首をひねってしまった。


(え? ……今、好き、って言った……よね?)

「ッ……!? えっ? ええっ! う、うそでしょ!」

「なんでうそなんだよ! うそだとしたら、ここまでベッタベタのシチュエーションで言うかよ! クソ恥ずかしいだろ!」


目を真ん丸にする私には、どうしても輝先輩の言葉が信じられない。


「う、うそだぁ……」


だけど、さっきよりもずっとずっとドキドキして、とにかく恥ずかしくてたまらなくて、そんな言葉しか出てこなかった。


「うそじゃない」


そんな私を見据える視線が、痛いほど真剣で。しかも、彼の顔は夕日のせいじゃない赤に染まっていて。

「……そう、ですか」

うそじゃないんだと思わされた。


途端、心臓が体を突き破りそうなほど大きく鳴って、頬が急激に熱くなった。


「っ、や……だって……先輩、そんなそぶりとかないし……」

「……それは、美波にその気がないってわかってたからだよ」

「で、でも……」

「受験を控えた夏休みに、好きでもない奴とここまで頻繁に会うかよ」

「だ、だって、それは……今までできなかったことをするためで……」

「っていう口実な」