「……美波?」

「っ……」

「どうした? もしかして怒った?」


肩を跳ねさせてしまったことをごまかすように、必死に下手な笑みを繕う。


「そ、そういえばさ、なんで観覧車だったの?」

「え?」

「ほら、他にもまだ乗ってないやつがあったのに、観覧車を選んだから! 高いところが好きとか?」


明るい雰囲気にしたつもりだったのに、声が微かに上ずった。
輝先輩に気づかれていないことを祈る私を、彼が真っ直ぐ見つめた。


「美波に言いたいことがあって」

「言いたいこと……?」

「うん。今日はちゃんと話そうって決めてきたから」


思わず身構えてしまう。


(もう遊ぶのをやめよう? それとも、二学期に入ったら受験に専念するから、学校以外では会えなくなる?)


考えられる限りのことを想像すると、私にとってはどれも嫌な話ばかり。
心が急降下していくのがわかって、つい唇を噛みしめかけた。


「……俺、美波のこと、女の子として見てるから」


直後、輝先輩が緊張した様子で静かに告げた。


「……ん? う、うん……? 私、これでも一応女子だけど……」

「は? いや、そうじゃなくてさ……」


いつになく歯切れが悪い彼を前に、自然と小首を傾げてしまう。