「おっ、あんまり待たずに乗れそうだな」


夏休み期間中はナイト営業もしている。
二時間ほど前からはアトラクションに並ぶ人たちが増え、観覧車の列にもそれなりに待っている人がいた。


ただ、みんなは夜景が目当てなのか、その列は長くない。
十分もすれば順番が来て、私たちは赤いゴンドラに乗り込んだ。


「よく遊んだなー。こんなに遊んだのって久しぶりだった」

「そう? ゲーセンに行ったし、先週はボーリングもしたじゃん」

「そうじゃなくて、丸一日遊んだのが久しぶりってことだよ」


対面に座る彼が、苦笑を零す。


「美波と会う時もだけど、他の友達ともちょっと遊ぶくらいだしな」


確かに、輝先輩とこうして丸一日一緒にいたのは初めてだ。
ゲームセンターやカラオケで遊んだり、ショッピングモールでアイスを食べたりと、短期間で結構遊んでいるけれど、会っているのはいつも数時間だけ。


課題をする時だって、お互いのバイトの都合を考え、さらには彼の家庭教師がない日に都合を合わせている。
だから、朝から夕方まで一緒に過ごしたことは一度もない。


「俺らって、先輩後輩っていうより友達って感じだけど、友達の中でも一番美波と過ごす時間が多いんだよなー。もう友達より仲いいと思わない?」


(友達以上ってこと? それって……)