由椰を銀髪のあやかしから攫いだしてくれた烏月の手のあたたかさや、抱きかかえられて空を飛んだこと、落とされまいと夢中で烏月の首に抱きついてしまったことを思い出すと、今頃になって恥ずかしさが込み上げてくる。
「だ、大丈夫です。もう、あのような失態は起こさないように気をつけますので……」
熱くなる頬に手をあてると、由椰は烏月や泰吉に背を向けて立ち上がった。
「私は祠を掃除して、供物を捧げてまいります。烏月様と泰吉さんは、どうぞゆっくりぼたもちを召し上がっていてください」
調理台に置かれた重箱の中から、供物用のぼたもちをいくつか皿にとると、由椰はそそくさと炊事場を出る。
「由椰様、私もお手伝いします」
由椰が廊下を歩いて行こうとすると、すぐに風音が追いかけてきた。後ろを歩く風音に赤い顔を見られないように、由椰は少し速足で屋敷の入口へと向かう。