「それを聞いて安心いたしました。村を助けてくださりありがとうございます。お礼にどうぞ、遠慮なく私を食らってください」
由椰が覚悟を決めて目を閉じた、そのとき。
「お前は、死にたいのか?」
烏月が、低い声で由椰に問うてきた。
「……」
死にたいのか——?
改めて問われてみれば、何と答えたらいいのかわからなかった。
生きたいのか、死にたいのか。自分の生死について、由椰は深く考えたこともない。
幼い頃に母を亡くしたあと、村の長の家に引き取られた由椰に、自分のために何かを選ぶ権利など与えられなかった。
雨の降らない日が続き、田畑が干からびて、神無司山に生贄を出すことが決められたときも。その生贄が由椰に決まったときも、由椰はあたりまえのように神無司山の神様の魂に捧げることを受け入れた。
誰も由椰の意志や気持ちを聞こうとはしなかったし、由椰自身も村の長が決めたことに「逆らう」という選択肢があることを思いつきもしなかった。
だから、わからない——。