「これを風夜さんに……」

 ちょうどそのとき、炊事場の戸が少し開いた。

「今日はぼたもちを作ると聞いたが……」
「はい、たくさん作っておりますよ」

 由椰が入り口の戸を開けると、烏月が中に入ってきて小上がりに腰かける。

「お先にいただいています。由椰様のぼたもちは、最高にうまいですよ」 

 すでに六つもぼたもちを食べている泰吉がそう言うと、

「なんだ、泰吉に先を越されていたのか」

 と、烏月が顔をしかめた。

「烏月様もたくさん召し上がってくださいね。すぐにお茶もお持ちします」

 由椰は形のきれいなぼたもちを皿にいくつかのせると、烏月のそばに置いてお茶の用意をした。

 湯飲みに炊事場にいる四人分のお茶を淹れて小上がりに運ぶと、烏月がひとつめのぼたもちを美味そうに食し終わるところだった。