「山の気が乱れると、どうなるのですか?」
「どうなるというより……、山の気が乱れるのは烏月様の神力が弱まっているからなんです。山の気が乱れると、木が育たず山が荒れてしまったり、よその土地から追い出された凶暴なあやかしが棲みついたりして、人にとって危険な場所になってしまうんです」
由椰と泰吉が話していると、風音がぼたもちをいくつか皿にのせて運んできた。
「おつかれさまです、泰吉さん。今日は兄がいなかったので大変でしたね」
風音が労いの言葉をかけると、皿の上からひとつぼたもちをとった泰吉が、大きな口でかぶりつく。
「そうなんだよ。風夜のいない分、見回る範囲が広くめ骨が折れた。あ、由椰様、このぼたもち、上手いですね」
泰吉がもごもごと口を動かしながら、あっという間にぼたもちを平らげる。その食べっぷりの良さに、由椰は思わず笑ってしまった。
「それはよかったです。たくさん食べて、元気を出してください」
「じゃあ、遠慮なく」
泰吉がそう言って、ふたつめのぼたもちに手を伸ばす。