「由椰様、こんな感じで良いでしょうか?」
由椰が餡子の中に餅を包んで丸めていると、風音が手のひらを開いて由椰に見せてきた。風音の色白の小さな手には、ぼたもちがのっている。
「完璧です。風音さんは、本当に何でも器用に作りますね」
綺麗に丸められたぼたもちを見て由椰が感心していると、風音が嬉しそうに頬を染めた。
「私が器用なのではなく、由椰様の教え方が上手いのですよ」
風音がそう言って、皿から丸めた餡子をとって手のひらに広げていく。そこに餅をのせると、小さな手で器用に包んで丸めていく。
その手付きをしばらく眺めてから、由椰も自分の手を動かした。
今日作っているぼたもちの材料は、一週間前に泰吉たちと人里で買ってきたものだ。
餅を包む餡子は、買ってきた小豆をたっぷりの水に一晩浸けたあと、コトコトとじっくり煮込んで完成させた。
冷めた餡子をひとくち味見してみたが、固すぎず、柔らかすぎず、ちょうどいい甘さに仕上がっていた。
風音と協力して作ったぼたもちは、全部で八十個。
「そろそろ、甘い匂いを嗅ぎつけた烏月様がこちらにいらっしゃる頃でしょうか」
思いのほかたくさんできあがったぼたもちを見て、風音ともにクスクスと笑う。
(烏月様に喜んでいただけますように……)
そんな思いで、由椰ができあがったぼたもちを重箱に詰めていると、廊下から物音がした。