「た、泰吉さん!?」
「食事のときに邪魔になるので、少し隠しただけです。オレは由椰様を食事に連れていくけど、お前はどうする?」

 泰吉が、買い物中もずっと無表情であとを着いてきていた風夜に声をかける。

 人里に用があるからと、烏月に今日のお供を買って出た風夜は、今のところ、由椰たちにぴったりとくっついてきていて、どこかに用を済ませに行く気配はない。

「和食なら付き合う」
「着物を着ている由椰様も、そっちのほうが入りやすいな。そうしよう」

 泰吉はうなずくと、どこか目当ての場所があるのか、由椰達を先導して歩き出した。

「風夜さん、もし何か用事があるようでしたら、遠慮せず行ってきてくださいね。今の人里の雰囲気にも少しずつ慣れてきましたし、私は大丈夫なので」
「あなたを心配しているわけではなく、ちょうど同じ方向に用があるので」

 由椰が遠慮がちに声をかけると、風夜が無表情ですんとしている。

 もしも風夜をつまらないことに無理やり付き合わせいるのだとしたら申し訳ない。由椰が気にして、少しそわそわしていると、先を歩いていた泰吉が振り向いてニヤリとした。

「気にしないで大丈夫ですよ、由椰様。本当は、人里に用事なんてないんですよ。風夜は由椰様と買い物したり昼ごはんが食べたくてついてきただけなので」
「え、そ、そうでしょうか……?」