「大丈夫ですよ」
髪を下ろそうとする由椰を止めたのは、穏やかな泰吉の声だった。
「何も気にせず、顔をあげていてください。周りの視線が集まるのは由椰様がお綺麗だからで、目の色の違いであなたのことを蔑んでいるわけではありませんから。今の人の世では、見た目で人を判断するなって教えられるんですよ。多様性の時代ですから」
「多様性……?」
長い時を生き、人里とよく行き来をしている泰吉は、ときどきよくわからないことを言う。
「ひとりひとり違っていていいってことです」
小首をかしげる由椰に、泰吉は笑って教えてくれた。
金色と青色の由椰の色違いの目も良い、ということだろうか。麓の村にいた頃、誰もが気味悪がって遠ざけた由椰の目の色を……?
いつも好意的なことしか言わない泰吉の言葉を、由椰は半信半疑で受け止める。