「最近の人里では、着物を着るのはおかしいでしょうか」
と由椰が聞くと、
「お洒落で着物を着たり、あえて和装で出かける方もいらっしゃるので問題ないかと思いますよ。由椰様はお着物がよくお似合いですものね」
と風音が言ってくれたので、ほっとしたのだ。
烏月の屋敷に迎えに来てくれた泰吉と風夜は着物ではなく、シャツやTシャツ、ズボンと呼ばれるものを着ていて、いつもとは違う風変わりな格好をしたふたりを、由椰は少し奇妙だなと思った。
だが、実際に人里に降りてきてみると、泰吉や風夜の格好こそ町の背景にしっくりと溶け込んでいて、千草色の着物姿の由椰のほうが、周囲から少しばかり浮いている。
泰吉と風夜に連れられて歩いていると、ときどき由椰へと視線が向けられているような気がして気になった。
由椰の格好がおかしいのか、それとも、風音にしっかりと髪を結い上げられたおかげで見えている左右色違いの目を気味悪く思われているのか。どちらかわからず、由椰は背中を丸めて下を向いた。
烏月の屋敷にいるあいだ、人目を気にすることを忘れていたが、見知らぬ他人の目に晒された途端に自分の容姿に自信がなくなる。
風音に申し訳ないと思いながらも、綺麗に結ってもらった髪を下ろそうと耳の横に手をかける。