「狸、相変わらずマナーがなっていないぞ」
烏月に報告することがあってきただけだと言っていた風夜が、風音の隣にしれっと座って鍋に箸を伸ばす。風夜も、なんだかんだで由椰の料理を気に入ってくれているらしい。
「たくさん食べてください。具材はまた切ればいいのですから。そうだ、烏月様。お餅もいれたので、食べてくださいね」
にぎやかな三人には見向きもせず、無言で食事をとる烏月に由椰が声をかける。
「餅も入ってるんですか?」
泰吉が鍋に箸を伸ばそうとすると、それまで周囲のことに無関心だった烏月が、パシリと泰吉の手の甲をはたいた。
「おれが先だ」
「ずるい。オレにもくださいよ、烏月様」
「残ったらな」
「いや、どれだけ食うつもりですか」
烏月と泰吉の子どものようなやりとりに、由椰は思わず笑ってしまう。
「笑ってないで、おまえも食え」
「……、はい」
烏月に言われて、由椰はまだ治まらない笑いを堪えながら鍋に箸を伸ばした。
食事の時間というのは、本来楽しいものなのだ。みんなで集まって食事をとるようになって初めて、由椰はそのことを知った。