「ただいま戻りました、由椰様」
「おかえりなさい、風音さん。風夜さんも、いらっしゃい」
「おれは烏月様に報告することがあって来ただけだ」

 由椰が声をかけると、風音の横で風夜がふいっと顔をそむける。

「兄様は由椰様のお料理が食べたくてついてきたんでしょう」
「違う」
「違いません」

 言い合いを始める兄妹を見て、由椰がクスリと笑う。

「風音さん、実家ではゆっくりすごせましたか?」
「ゆっくりできたと言えばできましたが……。やはり、由椰様のおそばにいる方が落ち着きます。ところで、今日の夕飯は何ですか? お手伝いすることはありますか?」

「もうほとんどできあがっているので、あとは食器や鍋を運ぶだけです」
「かしこまりました」

 にっこりと微笑むと、風音は食器棚から器や箸を取り出して、てきぱきと食事の準備を進めていった。

 由椰が和室の座卓に鶏団子の鍋を置くと、みんなが集まってくる。

「おいしそうですね! いただきます!」

 由椰が用意した食事に、いつもいちばんに飛びつくのは泰吉だ。

「泰吉さん、ひとりで食べすぎないでくださいね」

 配分を考えずに鍋の具材をどんどん器にとっていく泰吉に、風音が呆れ顔で注意する。