「よそ者の私が誰に喰われようが、烏月様には関係のないことです」

 由椰が強い口調で言い返すと、烏月の金色の目がつり上がり、カッと見開く。

「せっかくここにとどめてやっているというのに、お前は伊世に守られた命を簡単に捨てるつもりか。あやかしに喰われてしまえば、お前の魂は人の世に戻ることなく消えてしまうのだぞ」

 烏月の周囲で風が荒れ始め、由椰はほんの少し怯む。けれど、今さら神様の怒りに触れたところで引き下がるつもりはなかった。

 由椰(よそ者)には由椰(よそ者)の意地がある。

「神様としての力を望まず、消えたいと願い続けているあなたに、そんなこと言われたくありません……!」

 由椰が色違いの目でキッと睨みつけると、吹き荒れる風の音に負けないように叫んだ。

「なに……?」
「私に守られた命を捨てるなと言うのなら、烏月様も、あなた自身を大切にしてください。あなたも消えないで」

 烏月の周りで吹き荒れていた風が、驚いたように、ぴたりと止んだ。

 真っ直ぐに見つめてくる金色の瞳を、由椰もそらさずに見つめ返す。