なにが起きたのかわからず茫然としていると、仰向けに倒れたままの由椰の目の前に手が差し伸べられた。

「無事か」

 手をとって引き起こしてくれた人の顔を見て、ほんの一瞬、由椰の呼吸が止まる。由椰の前で膝をついていたのは、烏月だった。

「どうして、ここに……」
「なぜ、大鳥居の外に出た?」

 唖然と口を開いた由椰の声に、烏月の叱責するような低い声が重なる。由椰を見つめる烏月の金の瞳は、最後に見たときと変わらず怒っているようだった。

「それは……」

(あなたが出て行けと言ったからではないですか……!)

 思わず反論しようとしたとき、烏月の背後にゆらりと何かが近付いてくる。烏月の背後で鋭い爪を振り上げたのは、先ほど吹き飛ばされた銀髪の男だった。

「烏月様……!」

 反射的に烏月を庇おうと身を乗り出した由椰だったが、それよりも先に烏月が妖力で起こした風が男を吹き飛ばす。男が大きな木の幹に背を打って倒れると、烏月は微かに鼻で笑った。