「必要ない。今後一切、余計なことはするな」
烏月の冷たい言葉に、由椰はひさしぶりに胸を刺されたような悲しい気持ちになった。麓の村にいた頃から、拒絶されることには慣れていた。
だが、三百年の眠りから覚めてここに来てから、風音や泰吉にやさしくされて、由椰は少し勘違いをしていたらしい。
屋敷においてもらえているからといって、烏月が由椰を受け入れてくれているとは限らないのだ。
風夜が言っていたではないか。由椰は「よそ者」だと。
「差し出がましいことを言って、申し訳ありません。では、感謝の気持ちだけをここにおいておきます」
由椰がおにぎりの載った皿を祠に戻して、頭を下げる。その瞬間、由椰のそばをびゅっとものすごい突風が吹き抜けた。
祠に備えられた供物が飛ばされて倒れ、ガシャンと大きな音がする。酒の瓶が割れて中身が溢れ、紙でできた箱の中身は潰れ、由椰が備えたおにぎりはカタチが崩れ、皿が割れる。