「よければ、おかわりもしてくださいね」
「じゃあ、遠慮なく」

 由椰の言葉に、一気に釜飯を平らげた泰吉が茶碗を差し出してくる。

「はい、おかわりですね」

 由椰は泰吉から茶碗を受け取ると、炊事場で釜飯をよそって座敷に戻った。

「どうぞ、泰吉さん」
「ありがとうございます。由椰様がいると、何だか伊世様がいたときのことを思い出します」

 由椰が茶碗を置くと、泰吉が由椰を見てなつかしそうに目を細める。

「オレ達は、あまり食事を摂らなくても生きていけるんですけど、伊世様は人里から運んできたもので料理をするのが好きだったんですよ。昔は烏月様の屋敷でよく宴も開かれていて、にぎやかで楽しかったです」
「そうなのですね」

 烏月の屋敷は朝も昼も真夜中のように静かで、ここが賑わっている様子が由椰にはうまく想像できない。

「伊世様がいらっしゃった頃は、烏月様もみなさんのように人里から運んできたものを召し上がっていたのですか?」
「そうですね。あの頃は、烏月様も伊世様が作った料理を口にして、オレ達といっしょに酒を飲んでいましたよ。なつかしいよな、風夜」

 同意を求められた風夜が、ふんっと鼻を鳴らして泰吉をあしらう。

 仲が良いのか悪いのかわからない二人の様子に、ふっと笑いつつ、由椰は釜飯と団子汁に視線を落とした。