「風音さん、お米を炊きたいのですがかまどはどちらにあるのでしょう……」

 米や山菜を入れた釜を両手に抱えた由椰が、眉をさげて風音を振り返る。

 由椰に頼まれて汁に入れる団子を丸めていた風音は、粉で汚れた手を水で流すと、由椰のそばに歩み寄ってきた。

「お伝えするのを忘れていましたね。お米は、この機械を使えば簡単に炊けるんですよ」

 風音が、由椰の見たこともない変なカタチの釜の前のほうを触ると、フタが勝手にパカッと開く。

「今は、どんな妖力を使ったのですか?」

 由椰が呆気に取られて見ていると、風音がクスクスと笑った。

「今のは妖力ではありません。これは炊飯器と言って、電気でごはんを炊く機械です。フタにボタンが付いていて、押すと自動で開くんです。中に米と水を入れてスイッチを押せば一時間ほどでごはんが炊けるんですよ」
「電気……?」

 そういえば、麓の村で暮らしていたとき、外の国では火ではなく、石炭などを燃料にした灯りが使われていると聞いたことがある。