「由椰様、屋敷の外に散歩に行ってみませんか?」

 その日の午後。由椰が退屈していると思ったのか、風音が声をかけてきた。

「いいのですか?」
「もちろん。大鳥居の外に出なければ、屋敷の周りは自由に歩いていただいて大丈夫です。外へご案内しますね」

 風音の案内で、由椰は屋敷の外に出た。

 部屋から出口までは廊下が複雑に入り組んでいて、由椰がひとりで外に出るのは難しい。

「烏月様にお願いして、由椰様の部屋から外へ通じる戸までの道のりは迷わないようにしていただきますね」

(ひとりで外に出るときに、迷わないでしょうか)

 由椰が不安に思っていると、風音がそう言ってくれる。

 屋敷の外に出ると、太陽の光がとても眩しかった。

 由椰が眠っていた洞窟は薄暗かったし、烏月の屋敷に来てからも、外に出るのは夜明け前のお清めのときのみ。ずっとそんな生活をしていたから、陽の光を浴びるのがずいぶんとひさしぶりに思える。