母と暮らしていた小さな家は取り上げられ、村長の屋敷で外の目から隠されるようにして暮らし、生き延びるのに最低限の食糧と引き換えに家事労働を強いられた。

 夜は家畜の小屋で眠らされる由椰に、村長の家族たちは冷たかった。

 村長の屋敷には、ときどき、身内だという由椰と同じ年頃の少年が遊びに来ていた。彼がたまに声をかけてくれる以外に、由椰が人と交流を持つことはなかった。

 死にたいのか――?

 烏月に真正面から問われたときは言葉に詰まったが、あらためて考えてみれば、由椰は死にたいのかもしれない。

 どうせ初めから、由椰はいてもいなくても同じだった。

 だから、自分の生き死になどどうだっていいのだ。

 由椰としての生になんて、少しも未練はない。

 由椰という存在を、このまま消してしまいたい。

 ふわふわとした感覚に揺られた由椰の身体が、温かな光のほうにゆっくりと導かれていく。由椰がそちらに向かって手を伸ばそうとしたとき……。