生まれたときから生贄として差し出されるまで、麓の村だけが由椰の世界だった。

 生まれつき左右で色の違う由椰の瞳は、村の人たちに気味悪がられていて。村の中で由椰と口を聞いてくれたのは、母以外には村長の家族だけだった。

 だがそれも、由椰の母が村長の娘だったので仕方なく……といった感じで。村長の家族は必要最低限限でしか由椰に話しかけてこなかった。

 周囲の人たちの態度から、由椰は自分が母以外の人間からは疎まれているのだと理解していた。

 由椰を大切に育ててくれた母だったが、そんな母も、異国の血が混ざった不気味な目をした由椰を身ごもって、奉公先から村に帰ってきたことで、村人たちから奇異の目で見られていた。

 母と由椰が村の端の小さな家でひっそりと暮らすができたのは、母に村長の娘という後ろ盾があったからだ。

 だが、それも母が亡くなるまでのこと。

 十歳になる頃に母が病気で亡くなって以降、由椰の居場所はなくなった。