そうやって烏月が人々の暮らしのなかに溶け込んで生活していたのは、何百年以上か前までのこと。

 あるときを境に、烏月は人との触れ合いをやめて、大松の屋敷と外の世界との門戸を閉じてしまった。

 風音の話によると、烏月はあまり人間が好きではないらしい。だから、だろうか。

 由椰は、ここへ来たときに会って以来、一度も烏月と顔を合わせていなかった。

 金色の目をした美しい土地神様は、一日も早く由椰が屋敷から消えることを望んでいるのだろう。

 対面して言葉を交わした時間は僅かだったが、屋敷のどこにいるかもわからない烏月のことを思うと、由椰はなぜか、切なく淋しい気持ちになるのだった。