「そろそろ行くか」

 烏月が声をかけると、その手を取って立ち上がった由椰がはっとしたように烏月の唇に手を伸ばす。

「烏月様、紅が……」

 先ほど、口付けを交わしたときについたものだろう。

 恥ずかしそうに顔を赤くして、烏月の唇を拭おうとする由椰が愛おしい。

「愛している」

 烏月は口元に触れる由椰の手をとると、白く小さな手の甲に、誓いの言葉とともに口付けた。

Fin.