「やはり、私には無相応でしょうか……」

 膝にのせた手を握りしめて下を向いた由椰の左耳で黒瑪瑙の耳飾りが艶やかに光る。

「いや……」

 烏月は部屋に足を踏み入れると、由椰の左耳を指でそっと撫で、その手で彼女の頬に触れた。

「とてもよく似合っている。あまりに美しくて、つい見惚れていただけだ」

 烏月が由椰の顔を上げさせると、頬を赤く染めた由椰の左右色違いの瞳が困惑気味に揺れる。

「烏月様も、とてもお似合いです……! お隣に並ぶのが私ではもったいな――」

 烏月の婚礼着を褒めたあと、自信なさげにまたうつむこうとする由椰に、烏月が顔を寄せて口付ける。

「お前は、おれと共に生きると約束したのだろう」

 烏月が由椰の左耳の黒い石を、指で擦りながら訊ねる。由椰は真っ直ぐに見下ろしてくる烏月の美しい金の瞳を見つめると、「はい」と唇を震わせた。