祠の前でしばらく泣いたあと、由椰は自分の部屋に戻った。炊事場の片付けが終わっていなかったが、泣き腫らした目を風音に見られたら、きっと心配させてしまう。

 由椰は畳の上に仰向けに寝転がると、濡らしてきた手拭いを小さくたたんで目の上にのせた。

 冷たい手拭いが、まだ腫れぼったい瞼の熱をゆっくりと冷ましてくれる。そうしているうちに、由椰の頭は少しずつ冷静になってきた。

 心を込めて用意した贈り物を受け取ってもらえなかったことが悲しくて烏月から逃げてしまったが、次に会うとき、どんな顔をすればいいだろう。何もなかったことにして、笑えばいいのだろうか。

(烏月様の思いを知った以上、長くはここにいられない……)

 これ以上、余計な想いが募る前に、由椰は烏月のそばから離れなければならないと思った。

 だが、由椰が人の世に戻るためにはどうすればいいのだろう。もう一度、風夜と風音に泉で身体を清めてもらえばいいのだろうか。

 でも、またうまくいかなかったら……。

 ため息を吐きながら、着物の帯のあたりに両手をのせて指を組む。そのとき、由椰の指先に何かが触れた。