さっきよりも深いため息をついた烏月の視界の端で、水槽の金魚が尾鰭を揺らす。赤と黒の金魚はときどき寄り添ったり、離れたりしながら、水中で心地良さそうに揺蕩っている。

『ここに想いのあるものを残していってはいけない』

 そう言いながら、祭りの金魚を由椰が世話する条件で屋敷に持ち帰らせたのは烏月だ。

 想いのあるものを残すなと言いながら、烏月自身が想いの残るものを由椰のために屋敷に持ち込んでいる。

 矛盾する自分の行動と、変化していく気持ちに、烏月は途方に暮れていた。