『心配するな。お前が気に病まなくとも、由椰はおれの元で日々健やかに過ごしている』

 烏月がつい男を牽制するようなことを言ったのは、ふいに胸を襲ってきた不安と嫉妬心。烏月は、一時的に世話をしているだけだと思っていた由椰に、そんな感情を抱いていることに驚いた。

 だから――。

『烏月様は、私が輪廻の流れに戻ることをお望なのですよね……』
『そのほうが、お前もしあわせになれる』

 泣きそうな声で確かめてきた由椰に答えた烏月の言葉。あれは、半分は烏月の本心で、もう半分は由椰を前にして揺れてしまいそうになる自分への戒めだ。

 散らかったままの座卓に肘をつくと、烏月はため息を吐く。祠の前の由椰は今もなお泣いているらしい。身体に入り込んでくる冷たい空気が、烏月の胸を苦しくさせる。