「これをどこで……?」
「連れて行っていただいた祭りの出店で手に入れたものです。と言っても、不当に取ってきたものではありませんよ。私が生贄に出されたときに身に付けていた鼈甲の簪をお金に変えて買ったのです」

 木箱の中の耳飾りを訝しげに見つめる烏月に、由椰が早口で説明する。

「実際に簪をお金に変えたのも、耳飾りを買ってきてくださったのも風音さんなのですが……。祭りの日にこれを見つけたのは私です。烏月様にお似合いになるのでは、と一目見て思いました。これは、私からのささやかなお礼の気持ちです」

 由椰は耳飾りの入った木箱を烏月のほうに少し押しやると、膝の前に指をついて頭を下げた。

 由椰がドキドキと胸を高鳴らせながら反応を待っていると、烏月が色白の綺麗な手をずっと伸ばして木箱に蓋をする。

「気持ちはありがたいが、これをもらうことはできない」

 姿勢を低くする由椰の上から、抑揚のない烏月の声が聞こえてくる。

 拒絶するわけではないが、受け入れるわけでもない。感情の見えない平坦な声の響きに、由椰の心が沈んだ。