「喜んでいただけてよかったです。私がいつも穏やかに過ごすことができるのは、風音さんのおかげです」

 由椰がほっとして笑うと、涙目をした風音も由椰に笑い返すように口角を引き上げた。

「いえ。私がいつもお側にいるのは、由椰様のことが大好きだからですよ。これからも、由椰様にお仕えできれば嬉しいです」

 由椰にはこれまで、母以外の人を慕ったことも慕われたこともなかった。烏月の屋敷に連れてこられたときからそばにいてくれる風音は、妹のようであり、ときに姉のようでもある特別な存在だ。

「ありがとうございます。私も風音さんが大好きです」

 だからこそ、風音には自然とそんな言葉を伝えることができる。三百年前は孤独だった自身の心の変化が、由椰にはとても嬉しく思えた。