「これはいつもお世話になっている風音さんへのお礼です。私が作ったものなので、あまり上手ではないですが……」
桜色と藤色と金色の紐で梅結びにした髪飾りは、手のひらサイズの小さなものだ。
この前、人里に連れて行ってもらったときに手芸用品の店があり、髪飾り用に組紐をいくつか見繕ってきたのだ。
由椰が手作りの髪飾りを差し出すと、風音が口元に手をあてて動きを止める。
「……、すみません。風音さんの好みに合いませんでしたか……?」
風音が何も言わないので、由椰は少し不安になる。
(頼まれてもいないのに、押し付けがましかっただろうか)
由椰が髪飾りを木箱に戻そうとすると、
「由椰様、違うのです……」
風音が由椰の手をつかんで、すんっと鼻を鳴らした。
「まさか、私にこのようなものを用意してくださっていたとは思わず……、嬉しくて……。一生大切にいたします」
風音がそう言って、由椰から両手で梅結びの髪飾りを受け取る。