生まれ変わった世でも、与市は幸せに暮らしているらしい。遠くなっていく与市の姿をじっと見つめていると、烏月がそっと由椰の背を押した。

「帰るぞ」 

 着物越しに触れる烏月の手のぬくもりに、与市に会って乱れていた由椰の心が安らぐ。

 由椰の魂も、いつかは人の世に戻って与市のように新しく別の生を受けることになるだろう。けれど由椰には、それがしあわせなことと感じられなかった。

 由椰がしあわせだと感じるのは、烏月の存在がそばにあるとき。

 祭りの夜と過去への郷愁が、より一層、由椰にそう思わせるのだ。