祭りの夜はとても長く、そのあとも、由椰は烏月とともに屋台の並ぶ参道をいろいろと見て歩いた。
綺麗な色の甘い蜜がかかった氷や焼き鳥を食べたり、水の中に浮かぶ色とりどりのヨーヨーを小さな針金を付けた紙縒りで掬って遊んだり。烏月とともに体験する全てのことが由椰には初めてで楽しかった。
人ごみの中をかなり歩いて、本堂近くに建てられた櫓の近くまでやってきたとき、銀色の四角い桶の中で赤や黒の小さな魚が泳いでいるのが由椰の目に留まった。
「あれは金魚ですか?」
カラカラと下駄を鳴らして近付くと、烏月もあとからついてくる。
麓の村にいた頃に、由椰は絵に描かれた金魚を見たことがあった。村長の屋敷で、街中では金魚を掬う遊戯があるというのを聞いたこともある。だが、実物の金魚を見るのは初めてだ。
銀色の浅い桶の水の中には、赤や黒の小さな金魚がたくさん入れられている。尾びれをゆらゆらと揺らして泳ぐ金魚たちで作られた、赤と黒のまだら模様が美しい。
「お姉さん、一回三百円だよ」
由椰がぼんやりと眺めていると、屋台の店番の男が和紙の貼られたポイと水の入った丸い銀の容器を渡してきた。