烏月の両隣では、それぞれ若い男女と子どもが銃を構えて的を狙っていたが、うまく弾が当たらなかったり、当たっても商品の玩具や菓子は簡単には倒れない。

 意外と難しいのだなと思って由椰が見ていると、コルク弾を詰め終えた烏月が浴衣の袖を少したくし上げて、構えた銃を的に向けた。

 烏月の美しい立ち姿に目を奪われていると、パンッと破裂音がして、コルクの弾が小さな的に当たる。その勢いで、小さな菓子の箱がひとつ倒れた。

「わあ、すごいですね!」

 跳ねるようにして由椰が手をたたくと、そのそばで、烏月が次々とコルクの弾を的に当てていく。

 烏月が倒したのは全て、菓子の入った小さな箱で。遊戯を終えて銃を返却するのと引き換えに、五つの菓子の箱を受け取ると、それを全部、由椰の手に預けてきた。

「いただいてもいいのですか?」
「お前は甘い砂糖菓子が好きなのだろう。キャラメルにチョコレート。お前の好きそうなものばかりだぞ」

 由椰が目をぱちくりさせながら訊ねると、烏月が少しぶっきらぼうにそう言った。

 棚にはほかにもいろいろな種類の景品があったが、どうやら烏月は初めから、由椰のために菓子の箱ばかりを狙ってくれたらしい。

 祭りに連れてきてくれたり、由椰のために手鏡の贈り物をしてくれたり、遊戯で菓子をとってくれたり。今日の烏月は特別に優しい。

「ありがとうございます。大切にいただきます」

 由椰は烏月からもらった菓子を大事そうに胸に抱いてお礼を言うと、提げてきた巾着の中へと入れた。