「あれは——?」
由椰が小さな体に随分と重たそうな銃を抱えている子どもを心配そうに見ていると、パンッとまた音がして、屋台の奥の棚にあたる。
「あ~あ、だめだった」
屋台の店主に銃を渡すと、男の子は残念そうに肩を落として店から離れている。そばには父親らしき人が待っていて、悔しそうに何か話す男の子を宥めるように頭を撫でてやっていた。
その様子を由椰が眺めていると、
「ここの祭りは、ああいう遊戯の店も多いな。少しやってみるか?」
烏月がぼそりとつぶやいた。
「ちょっと待ってください……」
屋台のほうへ歩き出そうとする烏月の浴衣の袖を、由椰は慌ててつかまえる。
「なんだ?」
「あの銃は危険ではないのですか?」
由椰が不安そうに訊ねると、烏月が目を細めてククッと笑う。
「あれはコルク弾を詰めて打つ簡易なもので、子どもも使える遊戯用だ。火など上がらないから安心しろ」
烏月はそう言うと、屋台の店主に金を払って銃を借りた。一回の遊戯で使える弾は五つ。屋台の奥には三段の木の棚が作られていて、そこに的となる玩具や菓子が並べられている。
「あそこにある的のいずれかに弾をあてて倒せば、それが景品としてもらえる」
銃の筒の先端にコルクの弾を詰めながら、烏月が遊戯のやり方を説明してくれる。