「怖がることはない。お前は初めて会ったときから、ずっと美しい」
耳元で囁かれた烏月の声にドキリとして、由椰は小さく身震いをした。
(そんなことあるはずない……)
心の中で思うが、右手に重ねられた烏月の手を振り解けない。右側の顔を覆う手を烏月の大きな手にぎゅっと握り込まれて、ゆっくり、そっと、包帯の下の傷痕を確かめるように引き剥がされる。
そうして鏡に映された由椰の顔は、怯えていたほど恐ろしいものではなかった。
金と青の左右で色違いの目は、一目見たその瞬間は妙な感じがするだけで、顔の中の配置も、大きさも他の人間と変わらない。
二重のはっきりとした由椰の目は、左右対称にぱっちりとしていて、自分で思ったよりも綺麗な形をしていた。
化粧した色白の肌に、由椰の瞳は金と青の宝石のように映えている。右側の金の眼は、由椰の後ろから一緒に鏡を覗いている烏月の瞳の色とよく似ていた。
「どうだ? 心配することなど何もないだろう」
烏月がふっと笑って、手鏡を風音に渡す。
「では、行くか」
由椰の帯に回していた手を離した烏月が、大鳥居のほうに向かってゆっくりと歩き出した。