「さあ、急いで着替えましょう」
風音がそっと由椰の手を引く。それから、浴衣への着替えを手伝ってくれた。
紺色の華やかな浴衣を由椰に着せたあと、風音が烏月の瞳の色によく似た金色の帯を締める。今まで身に着けたことのないような華やかな配色に、由椰は背中で帯を結んでくれている風音のことを不安げに振り返った。
「あ、の……。着物も帯もとても綺麗ですが、少し華やかすぎませんか?」
風音はてきぱきと着付けていくが、由椰は艶やかな浴衣が自分にはあまり似合っていないような気がして落ち着かない。
「そんなことありませんよ。由椰様によくお似合いです。帯の色は、由椰様の右の瞳の色に合わせたのですよ」
浴衣の袖を少し引っ張ったり、揺らしたりしてそわそわする由椰に、風音がにっこりと微笑む。それから由椰のことを木製の小さな椅子に座らせると、由椰が邪魔にならないように適当に結っていた髪を綺麗に結いなおしてくれた。