「直接部屋に行くのは不粋かと思い、ここで待っていた。今日の食事は必要ない」

 烏月の言葉に、由椰はドキリとした。烏月に由椰の料理を拒否されたような気がしたのだ。

「必要ない、とは……?」
「風音、いるか?」

 不安な面持ちで訊ねる由椰に応える代わりに、烏月が上へと視線を向ける。

「ただいま戻ったところです」

 窓を閉め切っているはずの炊事場に、すーっと風が吹き込んできて、風音が姿を現す。

「頼んでいたものは用意できたか?」
「はい」
「ならば、由椰を部屋に」
「かしこまりました」

 烏月と風音が何の話をしているのかはわからないが、今夜は料理をさせてもらえないまま部屋に戻されるのだということだけはわかる。

(私はなにか烏月様の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのでしょうか……)

 困惑していると、烏月が由椰に視線を向けた。