「気持ちは、凄い嬉しいよ」

 あーダメだ。
 咲の困った表情と言い回しで分かった。黒い色が心を蝕んで行く。

優輝(ゆうき)とはさ。優輝とは、この関係で居たいな」

 やっぱりか。
 幼馴染と言う丁度良い関係を破ろうとした俺が馬鹿だった。初恋はいとも簡単に枯れ、それと共に心も積木の様に崩れた。
 世界に黒い(もや)が掛かる。花火の音が嫌に大きく聞こえた。

「まぁそうだよな」「ごめん」
「いや、俺が思い上がってた。ごめん」

 二人してお互いから目を逸らす。花火はそんな俺達を余所目に、またハートを打ち上げた。
 ただただ気まずい時間が流れ、靄は濃くなって行く。夜空に咲く花は色褪せて見えた。
 泣きたくなるのを必死に堪え、俯いてしまう。泣きたいのはお互い様だろう。咲より先に俺が泣くなんて恥だ。

(最低だな)

心の中で悪態を付く。