君の()に映る花火を見ていた。色とりどりで鮮やかな花火は、虹彩を彩っていた。花火よりも君の綺麗な横顔を見る方がよっぽど良い。

「ん?何か付いてる?」

 やべっバレた。小さな顔がこっちを見た。疑うような、少々間の抜けた顔で可愛い。

「んーん。何も無い。髪可愛いなって」
「あっそ。これお姉ちゃんにやってもらったんだ。可愛いよね〜」

 反対側を向き、丁寧にお団子が結われた頭を見せながら左右に揺れる姿は、本当に愛おしい。
 そして密かに胸を撫で下ろす。必死に取り繕い出てきた嘘、「髪可愛い」がこんなに上手く行くとは。

「あ!あれ何の形?」「クラゲ、っぽい?」
「クラゲか、可愛いね」「そうね〜」
「変な方むいてる」「それまた一興じゃね?」

 会話は途切れる事なく続いた。少し高めの快活な声が体中に染み渡る。この声をずっと聴いていたいとさえ思った。

「あれハートかな?」「可愛いじゃん」

 ピンク色のハートが二つ空に打ち上がる。どちらに言ったのか分からない「可愛い」は、次の花火に掻き消された。
 三歳で出会って早十三年。恋をして二年。正確には恋と気付いて二年。思えば彼女が初恋で、十三年の恋なのかもしれない。
 そろそろ良いだろうか。俺もあの二つのハートの様に寄り添いたい。

「でもやっぱノーマル花火が一番良いな〜」「分かる」

 丸い花が咲いた。赤い大輪は、音と共に俺の背中をドンッと押したんだ。それに釣られて初心(うぶ)な恋を伝える。

(さく)」「ん?」
「俺はずっと好きだった。咲の事がずっと好きだった。あ、LIKEじゃなくてLOVEね」

 余計な事言ったぁ……。咲はと言えば、元から大きな瞳をもっと見開いている。
 LIKEも件は一旦置いておいて、最後に言う。

「良かったら、付き合って、ほしい。……です」

 最後は消え入りそうな声だった。しかし今は達成感に浸るとしよう。大事になのは咲の答えだが。まぁ束の間の休息と言った所だろうか。
 返事を待ついつまでも続く時間。その間にも銃声の様な音が何回も空に響いた。そして小さな口が開く。