「待てよ」

そのまま去ろうとした少女へ新城は呼びかける。

「お前、陰陽塾の人間だな?」

無言で立ち去ろうとしていた少女はぴくりと反応して振り返った。

「若いですね」
「あ?」

ぽつりと呟いた少女は新城をみる。

「見た所、たまたま、アレに巻き込まれてしまっただけのようですが祓い屋としての力は下の下といったところですか?」

その目はどこまでも冷たく、見下しているような感じがある。

「アレについては忘れなさい。祓い屋程度が知ろうとしないように。あれは貴方達に身に余る存在。わかりましたね?」

彼女の下にみる発言に僕は隣の新城をみる。
新城凍真という男は見下されたりバカにされたりすることを嫌っている。もし、そんなことをした相手がいれば口や手で徹底的にわからせる。

――無。

いつも通りの表情をしているけれど、その目は全くの無感情だった。
恐ろしい怪異や理不尽な事をする呪術者と対峙した時に怒る新城の姿を見た事があったけれど、こんな表情ははじめてだ。
こんな新城は初めてで戸惑いが隠せない。
少女は伝えたいことを伝えて満足したのか式神を紙に戻すと足早にこの場を去っていく。
残されたのは新城と僕。

「これ、どうなるの?」
「とにかく帰って寝る。明日から面倒ごとが舞い込んでくるな」

明日から面倒ごとがやってくるという新城の言葉はあながち間違いではなかった。