「えぇ、二人とも大丈夫!?」

特別教室の中に入ると先に来ていた瀬戸さんが目を丸くして叫ぶ。

「えっと、まぁね」
「問題ない」

僕と千佐那の言葉に目をあっちこっちへ動かす瀬戸さん。

「え、でも、包帯まみれ」
「この程度、肉を食べていれば問題はない」

そういう問題でもないと思うんだけど。
苦笑しながら僕は席に着く。
千佐那と瀬戸さんが話をしている。
心配そうに千佐那の体を触っていた。
制服の脇から覗く包帯。
彼女を見てから自分の制服の上着をめくった。
肩とわき腹に巻かれた包帯。
少しばかり体を動かすとジンジンと痛みが走る。
昨日の戦いから一夜明けて、僕と千佐那は学校へ来ていた。
新城は陰陽塾へ報告に行くという百済さんの付き添いで昼から登校することになっている。

「大丈夫なら、良いけど、鬼とはいえ、千佐那も女なんだから肌は大事にしなさいよ?」
「そういうものなのか?」
「当たり前よ!特に千佐那は雲川が好きだっていうなら、大好きな雲川に綺麗な姿をみてもらいたいでしょ?」
「……そういうものなのか、わからないな。だが」

そこでちらりと千佐那が僕を見る。
目があったような気がして視線を逸らす。

「お前様に愛してもらえるというのなら……良いかもしれんな。ユウリ、どうすればいいのか教えてくれないか?」
「任せて!ふふふふ」

何だろう、聞こえてくるやり取りはすぐに止めるべきかもしれない。
そうしないとより千佐那が僕へアタックしてくる……ような気がした。
でも、綺麗になった彼女を見てみたいという気持ちは少しばかりある。
新城に悪いかもしれないけれど、僕は彼女へ少し歩み寄ろうと思う。
それが良い方向へ繋がるのか、悪い方向に繋がるかはわからない。
もし悪い方向へ進んでしまうのであれば、僕が止めれば良い。