殴られた二階堂のバランスが崩れた隙をついて、胸倉を掴んでそのまま地面へ叩きつけた。

「カッカッカ、良い腕よ!だが、足りぬ!足りぬぞぉ!」

地面へ叩きつけるという瞬間、くるりと反転して刃が脇を掠める。
でも。

「捕まえた」

わき腹と片方の手で刃を抑え込む。

「その程度で拙者が止まると思ったら大間違いだ。そのまま貴様の体を切り裂いて」
「いいや、アンタの終わりだよ」

肉を切らせて骨を断つという諺通りに斬られた箇所の肉に刃を押し込んで動きを封じ込める。
激痛に体から嫌な汗が噴き出てきた。
僕の腕は事前に新城が用意してくれた札がいくつも貼られている。
激痛を抑え込んでくれる役目と様々な攻撃から身を守る為の術。

「ぬ!?」

何かに気付いた二階堂の首がありえない動きをして新城をみた。
新城は懐からある物を取り出す。
――赤い拳銃。
側面に何かの言葉が無数に彫られている。

「貴様、それをどこで、嫌そもそも、そんなものを普通の人間が使える訳が!」

冷静で余裕だった彼が初めて見せる動揺。
銃を握りしめている新城と目が合う。

――絶対に逃がすな。

「わかった」

僕はもがく相手を上から動けないように抑え込む。

「貴様、それは、バカな、それは普通の人間が使えない道具。いや、まさか!貴様、本当に」

二階堂仁衛の言葉を遮る程に地面が揺れだす。

「地震?」
「くそ、くそくそくそくそくそ、この術が発動するという事は本当にアイツが……心浄とゆかりのある者、もしくは、いや、まさか!?」
「雲川、もういいぞ。離れろ」

新城がこちらへやってくる。
僕が離れると二階堂仁衛は地面に縫い付けられたように動けない。
いや。

「無数の手?」
「地獄の手だ」

傍までやってきた新城は二階堂を見下ろす。

「き、貴様、こんな術をどうやって、いや、何故、生きて」
「お前はやりすぎた。いや、これ以上、存在するだけで世界にとって害悪になる。だから」

彼の疑問に答えずに新城は見下ろす。