「そこは怒らないの？」
ぽつりとい呟いた新城に驚きながらも薙刀が二階堂仁衛の体を貫く。

「正論だが、相手の力量を読めていない以上は愚か者の行動に過ぎない。何度も話しても理解しない脳タリンめ」

事無く、刃が地面に落ちる。

「え？」
「邪魔だ」

百済さんの体から鮮血が飛び散る。
間抜けな声を出しながら地面に崩れ落ちた百済さん。

「ぐっ、ち、あぁああ」
「あまりの苛立ちに手元が狂ってしまった。まだ息があるか」

血の海に沈む百済さんへ冷たい目を向けながら二階堂仁衛が刀を持ち直す。

「前も言ったがあの世で学べ。未熟者」

凶刃が振り下ろされる瞬間、僕は駆け出して、十手で刃を弾く。
彼女を抱えてその場から全力で離れた。

「流石は守りてか、動きに無駄がない。だが、その未熟者を守る為に体力を使うとは愚かなり」
「愚かだと？」
「左様、この未熟者を見捨てれば無駄な力を使わずに済んだものを無駄と言わずに何を言う」
「アンタの発言からして、仕えていた相手がどんな奴かわかるよ。だが」

鋭い目で二階堂仁衛を見据えて新城が前に踏み出す。

「俺は犠牲の上に成り立つ勝利なんて認めない。俺が関わる以上、誰も犠牲を出させない！」
「本当に、あぁ、本当に心浄のような言葉を紡ぐな、貴様……だが、その言葉は無駄に終わる。なぜなら」

ギラリと刃を煌めかせながら二階堂が駆け出す。
僕は百済さんを地面へ寝かせると二人の間に割り込む。
振るわれる刃を十手で受け流して掌底を繰り出す。

「無駄ぁ！」

振り切った刃がそのまま背中を回してもう片方の手で掴んで振り下ろしてくる。
そんな技があるのか。
迫る刃を見て、僕は掌底をやめて、落ちていた薙刀を手に取る。
斬り落とされた薙刀で迫る刃を防いだけど、大きな音を立てて刃が砕けた。

「っ！」
「ん～～～、良い感触。だが、浅いな！」

肩に走る熱に顔を顰めながら十手で二階堂仁衛の横顔を殴る。

「ブフッ！」