「……」

新城の目をみて二階堂仁衛から表情が消える。
それと同時に体から迸る殺意が強くなっていく。
僕は新城を守れるように身構える。

「特定の誰かと戦いたい、そういう思いでお前は転生しているんじゃないのか?」
「………カ」

二階堂仁衛の口が開く。

「カッカカカカカカカカカカカッカ!」

歯をカチカチカチと鳴らしながら豪快に笑う姿。
今まで以上に殺意が膨れ上がっていく。
全身にビリビリと伝わってくる。
いつものように冷静な新城からも冷や汗が零れている。

「面白い、面白いぞ。こうも簡単に見破られるとはなぁ、そんな相手がこの時代にまだ居た事にとても驚きだ!」

ギラギラと血走った瞳でこちらをみながら刀を握りしめる。

「お主の言う通り!拙者は強い相手なら誰でもいいという訳ではない!カッカッカ!拙者が望むのは只一人!源時弥(みなもとのときや)!!あの妖刀を操る男!たった一度の敗北、けれども、何度、何度も、何度斬り合いたいと望んだか!しかし、あの一度きりしか奴と戦えぬ苦しさをわかるか!?何度転を、転生を、何度も繰り返してきたというのに巡り合えぬ苦しみ!!他者の命?女の命?そんなものより拙者の苦しみの方が何倍も辛いわ!」

僕は言葉が出なかった。
源の誰かは聞き取れなかったけれど、その人と戦う為だけに何度も転生を繰り返しているなんて、しかも、母体の命を軽視した発言。

「狂っている」
「そうだな。転生して、最初の目的は覚えているものの、それ以外は完全に狂った化け物だ」

新城が僕を呼ぶ。

「こんな奴は後世に残しても碌な事にならない。ここで終わらせる。だから手を貸してくれ」
「任せて」

新城の頼みに迷わずに僕は頷いた。
十手を握りしめて前に出る。

「十分、いや、五分、奴をあの場に釘付けを頼む。その間に俺が」
「見つけたぞ。転生者!!」

二階堂仁衛の背後から薙刀を手に百済さんが不意打ちを仕掛ける。
避難活動を新城がやらせていた筈なのに逆らったのだろうか?

「避難活動は終わらせた!その後に命令がなかった以上、好きにやっても構わん!」
「正論だな」