――式神。
それは陰陽師の命令で手足となって動く霊的存在の事を指す。
だが、それと別に式神と呼ばれるもう一つの存在があった。
陰陽師である術者を守護するべくパスと呼ばれるもので他者と繋いで力を分け与えた存在。
目の前の黒笠は後者として平安時代に存在していた人間である。
すらすらと説明する新城の言葉に僕はなんともいえない表情を浮かべている事だろう。
戦っている相手が戦国時代より更に前の時代の存在。
新城達にとって脅威と呼ばれるような相手。

「カッカッカ!よもやよもや!拙者の正体を見抜くとは、どこで見抜いた?」
「わかる条件を出し過ぎなんだよ。何よりあの一言が決定的だ」

呆れるような動作をとりながら新城は二階堂仁衛を睨む。

「お前、わざと自分の正体がわかるように情報を出していただろう」
「その通り、わかる可能性はないと思っていたが、こうも予定が狂うとは楽しみの一つと言える。我が主も同意するだろう」

にやりと笑いながら二階堂仁衛が刀を構える。
僕は懐から十手を取り出す。

「一つ聞きたいことがある」

新城が僕を止めながら二階堂仁衛へ尋ねた。

「お前は何故、転生するんだ?」
「なぬ?」
「転生者というのは何かしら理由があって転生すると聞く。お前はなんで転生するんだ?」

転生者については前に工藤先生が教えてくれた。
そして、新城が独自の情報網で調べていた。江戸に出現した転生者は強い猛者と戦いたい、身内を傷つけた相手の復讐、最愛の人を手に入れるといった理由で転生者が沢山、生み出されたという。
これが真実かどうかもわからない。でも、新城は目の前の二階堂仁衛が当初に告げていた理由に納得していなかったみたいだ。

「最初に告げた筈、我は強い相手と戦う事を望んでいると!」
「それだけの為に転生を続けると?」
「左様」
「いや、違うな」

二階堂仁衛の話を新城は否定する。

「確かに強い相手とお前は戦いたいんだろうな。だが、誰でもよいというわけじゃない」