その瞬間、黒笠の首が吹き飛ぶ。

「うん、使いやすい」

グチャと嫌な音を立てて宙を舞う黒笠の首。

「カッカッカ!恐ろしい奴だ。まさか力技で首を引きちぎられるのは久しぶりだ!」
「な、あ」

わき腹に激痛が走る。
顔を歪めながら千佐那は声の方をみる。
浮遊している首。
千切れた首先から伸びる黒いモヤモヤしたもの。
その先に千佐那が投げ捨てた小太刀を握りしめ、彼女の脇腹を貫いている。

「どう、して」
「甘い、甘い、拙者がこの程度で殺せると思ったのなら」

ニタァと笑いながら黒笠は小太刀を引き抜く。

「グッ」

痛みに顔を顰めながら膝をつく。
刀を引き抜かれた事でわき腹から大量の血と蒸気が噴き出す。

「退魔の力……バカな、小太刀にそんな力は」
「カッカッカ、素材が良いのだ」

黒笠の体が痙攣して起き上がる。
退魔の力を体に流された事で激痛と痺れによって満足に動けない。

「面白いことを思いついたぞ」

起き上がることすらできない千佐那をみて、黒笠は嗤う。

「お前の中に子をなしてやろうではないか!」
「何を……」
「転生した故に同胞が少ない。それ故に仲間を増やそうと思う。だが、同じような仲間を増やす為に条件があっての」
「条件?」

意識を集中させて退魔の力を押し戻す事を試みるがうまくいかない。

「強い母体」

起き上がろうとした千佐那の体をいつの間にか接近していた黒笠の体が上から抑え込む。
わき腹に走る痛みと痺れに満足に動けない。
上から抑え込まれて動くことが出来ない千佐那に黒笠の体がゆっくりと近づいていく。

「我が仲間の母体になって――」

千佐那の体へ伸びる手。
ゆっくりと近づいていく動きが彼女へ恐怖感を与えようとする。

「お前様……」