A県のとある山中。
世間に浸透していない宗教団体が存在していた。
存在を知っているのはごく一部の者達のみ。
彼らは邪神を崇拝している危険な思想の連中。
警察は彼らを危険視していない。
何故なら彼らはオカルトを崇拝しているが犯罪をしている訳ではない。
犯罪をしているという証拠がない以上、警察は動けない。
信者達も去る者拒まず、来るものすべて受け入れるというスタンス故に大きな問題もない。
だが、警戒している者はいる。
警戒している者達は世間が信じないオカルトを危険視する者達、中でも陰陽塾と呼ばれる政府機関は超重要警戒対象として遠距離で監視していた。

「これは、酷い」

陰陽塾から雇われたベテランの祓い屋の一人が顔を顰める。
彼は宗教団体の本部へ数人の同業者を連れて入っている。
不法侵入というわけではない。
そもそも、咎める者が誰も存在していなかった。

「床、天井、壁、何をどうやったら一つの色に染まるんだよ」

青ざめている同業者の背中をさすりながらリーダーの男は奥に進む歩みを止めない。
数時間前、監視をしていた陰陽塾のメンバーからの連絡が途絶えた。
状況を確認する為に陰陽塾は後続に控えていたメンバーをその施設へ調査に向かわせる。
その後続メンバーからの連絡も途絶えた事を重く捉えた陰陽塾は周辺で活動している腕に自信のある祓い屋を雇い入れた。
年齢、経歴から一人の祓い屋をリーダー格として編成された即席チームが宗教団体の本部へ突入。
人はおらず、床、壁、天井、窓のすべてが一つの色に染まりあがっている空間。
彼らはおぞましい光景に直面していた。

「ここの連中は一体、何をやらかしたんだ?」
「おーい、死体があったぞ!」

仲間の一人の声に扉の空いている一室へ彼らは入る。

「これは、酷い」

室内に散らばっている無数の肢体。
それらは後続で調査に向かった陰陽塾のメンバー。
彼らは何があったのは体のすべてが綺麗に両断され、誰が誰のものかわからないほどに乱雑に散らばっている。
最年少の祓い屋は限界が来たのか口を押えて外へ飛び出す。