「頭が痛くなってきた」
「奇遇だな。俺もだよ」

問題は山積みだ。
「新城の方の準備って?」
「出来てはいるが……もう少し用意しておきたい事がある」

コツコツと服の中に隠している物をみせてくる。

「僕はどうしたらいい?」
「その事だが、青鬼」
「なんだ?」

新城は僕の隣にいる彼女へ視線を向けた。

「しばらく新城の護衛を頼む」
「任せてくれ。旦那様は私が守る。そして、今回の功績で婚姻を認めてくれ」
「知るか、それは当人同士の問題だ。俺は乱暴を赦さないだけだ」
「ふむ。わかった」

彼女はそういうとどこからか取り出した小太刀を横薙ぎに振るう。

「「!?」」

突然の事に僕は反応が遅れた。
新城すら気付けなかった。
ガラスを切り裂いて踏み込んでくる怪異に千佐那は小太刀で立ち向かう。

「カッカッカ!奇遇よな!こんなところで強者が揃っているとはのぉ!」
「よく言うぜ。俺達が集まるのをとこかで見ていたんじゃないのか?」

悲鳴を上げて逃げ惑う人達に被害が及ばないように周囲を見ながら新城が顔を顰める。

「言った筈だ。お前達が揃った時に相まみえようと!」
「確かに、明確な時間を決めていなかったな。まさか、別れて数時間たらずでやってくるなんて、裏をかいてくるとは驚きだよ」

悔しいという感情が新城の顔に浮かんでいる。
あの新城が裏をかかれたという事実に僕は驚きを隠せない。
僕の知る新城はどんな相手でも余裕という態度をとっていたから。

「カッカッカ、さて、今回は二人揃っている。ちゃんと名乗ってもらおうではないか?」

砕けたガラスの破片を踏みながらゆっくりと僕達へ近づく怪異。
懐から十手を取り出す。
新城も先ほどの悔しそうな表情から真面目になって構える。

「おい、下僕。お前は周辺の人間を避難させろ。人払いの術くらいできるだろ」
「だ、誰が下僕だ!?私だって」
「命令、人払い、すぐやれ!」
「うぅぐ!わかりました」